暮らしで身近な素材のコットン。その中でも近年「オーガニックコットン」に注目が集まっています。いったいオーガニックコットンとはどんなものでしょうか?その定義や背景、環境負荷や労働環境などの観点も含めて、メリット・デメリット、今おすすめの商品までご紹介します!
目次
オーガニックコットンとは?
そもそも、オーガニックコットンとはどういうものでしょうか?
厳しい基準をクリアした「有機栽培」による綿花
オーガニックコットンとは、化学物質由来の農薬・肥料を2~3年以上使用していない農地で、有機栽培で育てられた綿花でできたコットンのことを指します。
さらに、コットンになるまでの全ての製造工程で環境負荷を最小限に抑えることや、労働の安全、児童労働などの社会的規範を守ることも、オーガニックコットンの基準とされています。
(参考:NPO法人 日本オーガニックコットン協会)
オーガニックコットンと、一般的なコットンの違い
そんなオーガニックコットンですが、実は一般的なコットンと「肌にいいかどうか」という品質上の違いはないと言われています。
一般的なコットンは残留農薬の心配が叫ばれることもありますが、実際は収穫時でほとんど残留農薬は見られず、製造工程をさらに経ることで益々その危険性は低くなると言われています。
そのため、消費者にとっては一般的なコットンと品質上の違いはありませんが、オーガニックコットンを選ぶことで、次でお伝えするような地球環境や生産現場の労働環境にとって良い天然素材です。
綿花栽培をめぐる問題 | オーガニックコットンがおすすめされる理由
それでは、オーガニックコットンがおすすめされる理由とは何なのでしょうか。
その理由には、一般的なコットンの製造過程で生まれる2つの問題があげられます。
環境負荷の問題
一般的なコットンの栽培には、化学肥料や枯葉剤などの農薬・除草剤が大量に使用されています。それによる土壌への残留農薬や、本来殺す必要のない生物も殺してしまうなど、栽培時の環境への負荷が問題となっています。一方オーガニックコットンでは、化学物質を使用しない有機栽培ですので、環境負荷を軽減しながら生産することが可能です。
通常のコットン | オーガニックコットン | |
化学肥料 | 使用する | 使用しない |
防虫対策 | 防虫剤・殺虫剤の使用 | 植物由来の防虫エキス等の使用 |
除草対策 | 除草剤使用 | 手作業での除草 |
染色方法 | 漂白剤を使用して、染料が入りやすくする | 化学薬品を使用しない天然染料や無線色 |
土壌汚染 | 化学薬品により、劣化 | 有機肥料のみのため、環境に優しい |
水質汚染 | 化学薬品により、汚染する | 農薬を使用しないため、水質汚染につながらない |
水野消費量 | 大量に消費する | 雨水仕様を推奨されているため節水できる |
空気汚染 | 防虫剤などでの大気汚染により、奇形児や健康被害を受ける | 化学薬品を使用しないため、空気汚染につながらない |
薬剤残留 | 洗い工程でも取り切れない薬剤が残留したまま製品になることも | 科学薬品を使用しないため、人体負荷が少ない |
(参考:https://blog.tunageru.com/all-about-textile/what-is-organic-cotton/ より)
人権・労働環境の問題
コットンの元となる綿花は、発展途上国での栽培も多く、幼い子供たちが労働力となっている地域もあります。
また綿花が収穫されてからコットンになるまでの製造工場においても「労働条件」「労働組合の有無」「視察の防災対策」「就労中のケガ対策」といった条件や対策の不十分な労働環境が問題視されています。劣悪な労働環境が原因となり発生した事故の代表的な例が「ラナプラザの悲劇」です。2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊にあった縫製工場で、ビル崩落を起こしうる危険な亀裂が見つかっていたにも関わらず製造を続けさせていた複合ビルが崩落し、死者1,138人を出す大惨事が起きました。事故の後、アパレル企業を中心に労働環境に関する協定が結ばれ、現在は改善へと舵を切りだしています。
オーガニックコットンでは、このような人権・労働環境の問題が発生しないよう配慮することが基準に含まれています。
原材料となる綿花は、発展途上国での栽培も多く、農薬を購入するための借金や、農薬による健康被害や、それらによる自殺率の高さ、また幼い子供たちが労働力となっている児童労働などの問題も関係しています。
例えば、世界トップクラスの生産国であるインドの一部では、通常のコットンを生産するために必要な農薬や化学肥料、遺伝子組み換えの種を購入するため、借金して栽培を始めます。
しかし不作の年や、農薬による健康被害などで働けなくなると、借金を返せなくなり、それらが原因となり30分にひとりが自殺をはかっているとも言われています。
残された家族には、インド政府から補償金が出る仕組みになっていますが、そのお金を目当てに自殺してしまう人もいるほど貧しい地域です。また貧しいが故の児童労働も、少なくありません。
インドでは、約40万人以上の子どもたちが働いており、その7~8割は女の子と言われています。実際に綿花の生産過程で働いていた女の子の賃金は、日給30ルピー(約75円)程度のことも。低賃金の長時間労働、健康被害により学校に行くことはできないこともあります。
(参照:https://acejapan.org/cotton/childlabour)
このように通常のコットンでは、発展途上国の人々が身を削って生産している可能性が少なからずあるといえます。
オーガニックコットンでは、そのような問題をできる限り排除できるよう、社会的規範をまもる基準も設けられています。
オーガニックコットンがおすすめされる理由は?
前述した通り、オーガニックコットンは全ての製造工程で、環境負荷を最小限に抑えることや、労働の安全や児童労働などの社会的規範を守ることを基準としています。
そのため、オーガニックコットンを選ぶことが、地球環境を守り、さらには製造に関わるすべての人たちの労働環境の向上に貢献すると言えるでしょう。
これはSDGsの17つのゴールのうち、「12.つくる責任 つかう責任」「1. 貧困をなくそう」「3. すべての人に健康と福祉を」の3つのゴールの達成に繋がります。
オーガニックコットンのメリット
オーガニックコットンのメリットには、どんなものがあるのでしょうか。
基本的には一般的なコットンと同じメリットが挙げられます。
保温性
衣類の保温性は生地が含む空気量で決まります。オーガニックコットンも通常のコットン生地と同じく空洞があるためそこに空気を含み保温効果が発揮され、冬にも暖かく着ることができます。
吸湿性・通気性
コットンは吸湿性・通気性に優れているので、タオル・パジャマ・下着など、直接肌に触れる衣類にも広く活用されています。
肌触りがよく、皮膚への刺激が少ない
原料となる綿花はもともと種子を守る「種子毛」ということもあり、ふわふわとした手触りが特長です。皮膚への刺激も少なく、大人から子供まで安心して身に着けることができます。
オーガニックコットンのデメリット・注意点
一方、オーガニックコットンのデメリットとは何でしょうか? オーガニックコットンのデメリットも、基本的には以下のように通常のコットンと同じものが挙げられます。
洗濯方法に注意
オーガニックコットンは、そのまま洗濯・脱水をすると縮んでしまい、しわができることも。また、色落ちもしやすく、特に1回目の洗濯には注意が必要です。
毛玉ができやすい
静電気による毛玉ができやすいため、いつも同じ部分がこすれないように気を付ける必要があります。
オーガニックコットンのおすすめのお手入れ方法
オーガニックコットンの衣類を長く愛用するために、おすすめの手入れ方法をご紹介します。
洗濯の仕方
オーガニックコットンの衣類は、必ず洗濯表示を確認しそれに従って洗濯しましょう。洗濯機で洗う場合は汚れが気になる面を表面に向けて畳み、ネットにいれて洗濯。コースは「ドライコース」、「手洗いコース」を選びましょう。
色付きのオーガニックコットン衣類は色落ちしやすいので、他の洗濯物とは分けて洗濯することをおすすめします。
毛玉とり
特にニット類では毛玉ができやすくなっています。まずはニット用のブラシを用意し、目の方向に沿ってブラッシング。するとホコリが取れ、毛羽立ちや絡みもとることができます。その後、小さめのハサミで毛玉を切ってあげましょう。また、毛玉取りを使用するのも簡単でおすすめです。
干し方
オーガニックコットン衣類は、生地が厚く干し方を間違えると生乾きとなりやすいので、注意が必要です。風通しの良い場所で、完全に乾かすようにしましょう。
またニットなどの重い服は、ハンガーで干すと伸びてしまいますので、陰で平干することと良いでしょう。平干が難しい場合は、物干し竿に2つ折りにしてかける方法がお手軽ですよ。
なお、コットンは熱で縮む性質があるため、乾燥機やアイロンの使用は控えるようにしましょう。
オーガニックコットンのおすすめ商品
それではここでオーガニックコットンを使ったおすすめ商品を3つご紹介します!
無印良品|太番手天竺編みフレンチスリーブTシャツ
「無印良品」の衣類等に使用されるコットンは100%オーガニックコットンです。
中でもこのフレンチスリーブTシャツは、オーガニックコットンの優しい肌触りと、袖がすっきりとしたシンプルなスタイルが特長。1枚でもしっかりとした印象を与えますし、カーディガンを羽織る際のインナーにも使え、1枚あれば重宝するTシャツです。
People Tree|SLOW ORGANICオーガニックコットン男女兼用パジャマ
「People Tree」は、自然素材を1つ1つ手仕事で仕上げたフェアトレード商品を取り扱うブランドです。商品ページでその商品の作り手が紹介されている点も魅力の1つです。
100%オーガニックコットンを使用したこちらの商品は、とろんとした生地感が素肌に心地いいパジャマです。柔らかな肌触りのオーガニックコットンに包まれる贅沢なひとときを味わうことができます。
THE ORGANIC COMPANY |PIQUE TOWEL 155 × 60
「The Organic Company」は、2007年にデンマークで誕生したオーガニックコットン商品ブランド。
バス・キッチンの生活用品から、リラクゼーションなどの余暇時間のアイテムまで、オーガニック素材にこだわりながらも、デザイン性・機能性ともに優れた製品を販売しています。
中でも日々のバスタイムで使いやすい、ピケシリーズのバスタオルサイズをご紹介。
オーガニックコットンの特長を生かしたこのタオルは、吸水性・速乾性にも優れ、お風呂上がりの素肌を優しく包みこんでくれます。
まとめ
いかがでしたか。「オーガニックコットンって何となく良さそう」と思っていた方も、その製造背景も含めた良いところや課題なども知っていただけたのではないでしょうか。
私たちが選択するオーガニックコットン製品がどのように製造をされているかについて、少しでも知り、環境負荷の削減や、製造に関わる人々の幸せにつながることを応援していきたいですね。
ぜひ、Tシャツ・タオルといった身近なものから、気になったオーガニックコットン製品があれば取り入れてみてくださいね。
<ライタープロフィール>
山本 楓子
神戸大学大学院 農学研究科修了、農業土木分野専攻。祖父母が青森でりんご農家を営んでいることから、農業や地域振興に関心があり、学生時代は東北や四国などのエリアに出向き、現地法人にてインターンシップを経験する。新卒で大手人材会社(東証一部上場)で人材紹介の法人営業・キャリアアドバイザーを1年半従事。その後、現在は宮城県の丸森町へIターン移住しており、丸森町の地域おこし協力隊として、地域の6次化等に携わる。
これまで出会った生産者さんの想いに感銘したことや、おじいちゃん・おばあちゃんのりんご畑の風景を残したいという想いから、現在はそれらの魅力を伝えるために、カメラマン兼ライターとして執筆・発信活動をしています。
また、季節の食材で漬物をつけたり、自然や四季を感じながら毎日を丁寧に過ごすおばあちゃんの生活が好きで、自分自身もそんな暮らしをしたいなと思っています。